費隠和尚(1593年~1661年)は、常日頃から特別に何か凝ってものを蒐集するいわゆるいわゆる骨董趣味を避けておられた。浙江省嘉興県崇徳の福厳寺に住持されていた時、和尚の信者で呉郡の官吏をしていた蘇という人物が琥珀で造った数珠を和尚に贈ってきた。和尚はこの数珠を持って来た遣いの者に

「これは大変貴重なものだ。これを私の方丈の室(和尚のいつもいる部屋)内に置いていると、貴重なものだけに、これから後、私の部屋を訪れてくれる人達が皆欲しがって、争いのもとになるだろう。といってもこれをもし他の人に売るとすれば、信者であるあなたの主人の贈って下さった真心にそむくことになる。私はもともと立派なものや珍しいものを集めるといった趣味が無いので、どうかお持ち帰り下さい」

と、堅く受け取ることを断って返された。