シナ黄檗山の鑑源興寿禅師は隠元禅師を出家させられた師匠である。禅師は僧侶としての戒律を厳しく守られた大徳で、ある時隣にいた僧が話しのついでに、ある在家で法事にまねかれて行ったがお布施が少なかったと不平をこぼしているのを聞きとがめられて、

「われわれ出家して僧侶となった者は衣を着ているものの、ついすると衣を着ていながら仏法がどういうことを教えているものであるか道に対する開眼を忘れがちである。霊前でお経を唱えて成仏させることが出来てもそれは当たり前のことである。ましてそれさえ出来ないなら水を飲んでも消化しがたいことである。お布施が少ないと不平をいうなどもってのほかだ」

と、諭されたのでその僧は顔をあかくして、早々として立ち去って行った。