即非和尚の信者がある日訪ねてきて

「お墓を建てるのにいろいろ吉凶がいわれているがこれは迷信でなく信じてもよいものだろうか」

と尋ねられると、和尚は

「土地がよいとそこには優れた人が生まれる。だから土地と人物との間につながりがないとは言えない。しかし、山や川の秀でた気と当人の正しい気とが、うまく結ばれてはじめて聖人や賢人も産まれるものである。身を立てて名をあげ祖先をも子孫をも栄えるようにするには、善徳を積まなければならない。もし平生一つの善徳も施したこともないのに、その土地の風水のお蔭をお願いして、よいことがありますようにと望むのは、ちょうど子供を産めない石女にどうか児を産んでくれるようにと無理な要求を押しつけるようなもので出来ない相談だ」

と答えられた。